
国語が子どもをダメにする 詳細
国語力とは論理的思考力である。しかし、学校では感性の授業ばかり。一方、進学塾の模試やセンター試験は読解偏重、難解複雑信仰、長文速読主義で弊害が多い――カリスマ教師が、国語教育の大罪を内部から検証し、脚光を浴びる「ふくしま式」メソッドを伝授。革命的な国語教育論。
- この本には、「小学校教育が危ない!」及び「連続ツイート」を利用した内容が2割ほど含まれます。
ただし、いずれも大幅な加筆修正を行っており、実質的には「全編書き下ろし」となっています。
はじめに
- 国語教育がめちゃくちゃだ。
このままでは、子どもがダメになる。
日本がダメになる。
ただし、この本は国語教育の重要性を訴える本、ではない。
国語が大切――そんなことは、分かりきっている。今さら言うことではない。
問題は、その大切な国語を、まともに教えていないということだ。
その大切な国語の能力を測るテストが、狂っているということだ。
学校もダメだ。進学塾もダメだ。
感性の国語、自由すぎる国語。読解偏重、難解複雑信仰、長文速読主義の国語。
こういった問題点を一つひとつ明らかにし、変革していかない限り、日本の子どもはダメになる。
国語力。それは、論理的思考の技術を使いこなす能力である。
端的に言えば、論理的思考力である。
これを身につけさせることこそが、国語教育である。
これは常識だ。
しかし、現状はその常識を外れている。
まず、その現状を知ることだ。
して、改革を始めることだ。
この本は、「国語科を日本語科と呼んだらどうか」とか、「英語教育よりまず国語教育でしょ」とか、そういう話を書いた本ではない。
国語教育が抱える問題点を洗い出し、傷口を開き、内部から切り込んでいこうとする本である。
私がこれまで世に出してきた本は一〇冊ある。
それらの多くは、「治療法」重視であった。
一方、今回は、傷口を開くことに重点を置いた。
相当、痛い。
痛みに耐えて、読んでほしい。
傷を治すには、まずその傷の位置を、傷の深さを、傷の原因を、正確に知らなくてはならない。
さあ、早速、傷口を開いていくことにしよう。
――目次――
はじめに
第1章 感性の国語を脱却せよ
【1】惨状を赤裸々に暴く
- 全授業に占める国語科の割合
- 「私、国語の授業って苦手なのよね」
- 音読の「指導」も「評価」も放棄する教師
- 授業で音読をどう扱うか
- 宿題をやめよ、授業をせよ
- 感性の授業、味わう授業
- 国語なのか、道徳なのか
- 自主性尊重の美名の下に展開される感覚的“授業”
- 解釈なき芝居化など不可能
- 国語の教科書なのか、“道徳の教科書”なのか
- 「今日やりたいことを教えて」
- 本当に「手法を教えて」いるのか
【2】「内容」より「形式」を重視せよ
- 国語科の目標とは何か
- 「内容」よりも「形式」
- まずフォームから変える
- 文章の優劣を判定してみよう
- 好意的な解釈をしてはいけない
- ワインとグラス、どちらを優先するか
- これこそが教師の責務だ
- 校種・学年は関係あるのか
- 「型」アレルギーの人へ
- 「型」の五箇条
- 教科書「を」教えよ
- 国語教科書は「目的」がもやもや
- 技術教育に目覚めつつある教科書
- 技術を大きく分類し、名前をつけよ
- 基礎なきところに応用なし
【3】自由を限定すれば、自由は拡大する
- 言葉遊びは終わりにしよう
- 「与える」ことを恐れるな
- 自主性信仰を排除せよ
- 方法を与えていくための方法とは
- 「教科書が薄すぎる」と批判するなかれ
- 形式が内容を引き出す
- 読売新聞「教育ルネサンス」で紹介された授業
- 「読書感想文」の罪悪
- 解釈なくして感動なし
第2章 読解偏重・難解複雑信仰・長文速読主義を排除せよ
【1】入試国語の憂うべき実態
- 「構成力」と「再構成力」どちらを試すべきなのか
- 難解複雑の意味、長文速読の実態
- 足し算すら怪しい子に四則混合計算をさせる愚
- 中学入試も大学入試も大差なし
- 「『それ』とは何か」が成立する文章は悪文
- 悪辣なるかな「抜き出し問題」
- 抜き出し問題を無理やり作るとこうなる
- 一読して要求をつかみづらい設問もまた「悪文」
- 設問をパズル化する必要などない
【2】物語・小説を読解問題に出すなかれ
- 文学的文章を出題すべきでない三つの理由
- 文学読解テストの悪問パターン二つ
- 朝日新聞記事「入試に小説 なぜ出ない?」
- 都立高校入試 平成二三年度「小説」を斬る
- 都立高校入試代案
- センター試験「裏ワザ」本の“正しさ”
- 悪評オンパレードの問5、問6
- 開き直った「問題作成部会」
- 50万人中40万人が間違えた悪問を分析する
- 悪評、枚挙にいとまなし
- 弱気な教師、弱気な親
第3章 国語教育はこう変えろ!
【1】国語力向上の原理・原則
- 国語力とは、論理的思考力である (論理的思考力とは何か)
- 論理的思考力とは「3つの力」である
- 同等関係を整理する力――「言いかえる力」
- 対比関係を整理する力――「くらべる力」
- 因果関係を整理する力――「たどる力」
- あらゆる読解問題は「関係」を問うている
- 読解問題を出題する際の「正攻法」とは
- 慶應義塾大学の入試に学べ
【2】論理的思考力を高める実践トレーニング
- 「言いかえる力」を高める実践トレーニング
- 仮想意見文によって「自分」を離れさせる
- 抽象化力とは名詞化力である
- ことわざを利用して「言いかえる力」を高める
- サンドイッチ型で文章を構成させる
- 「くらべる力」を高める実践トレーニング
- 譲歩のパターンの中でも対比を意識させる
- 「たどる力」を高める実践トレーニング
- 好きです嫌いです作文をやめよ
- 物語・小説の「主題文」を構造化する
- 「三つの力」を複合して書く「共通点・相違点作文」
- 驚くほど深い考察に手が届く
- 普遍的な「対比の観点」を持つということ
【3】国語テストを一新せよ
- 中学入試国語を変革せよ
- センター国語を刷新せよ
- 「PISA」はどう影響するか
- PISA型信仰に警鐘を鳴らす
- 「公立中高一貫校適性検査」「全国学力テスト」が拍車をかける
- わが子を疑う前にテストを疑え
- 終わりに
終わりに
- 「こいつ、ずいぶん偉そうに書いてるな、何様だ?」
そんな反発を感じたのであれば、私のメッセージは読者であるあなたに届いたということだろう。
人間、自分の弱点を突かれたと感じたときに、最も反感を覚えるものである。知らず知らず、自己防衛の構えに入るわけだ。
反感を覚えながらもとりあえずページをめくっていき、最後まで読んでしまったあなたは、変革の必要性に薄々感づきながらも実際に何らかの手段を講じるところまではたどりついていなかった、なかなか一歩踏み出すことができなかった――そんな方なのかもしれない。
この本を足がかりに、ぜひ行動を起こしていただきたい。
もし、反感を覚えたどころか大賛成して膝を打った、という方であれば、それはそれで大歓迎、ありがたいことだ。
そんなあなたにとっては、思わぬ味方を得た気分だろう。「この本には、自分がこれまで考えていたことが、これでもかというくらいにはっきりと書かれている。自分の考えは、やはり間違っていなかったんだ」。そんな気持ちになっていただけたのであれば、著者冥利に尽きるというものだ。
この本には、私が小学校教師であった当時に抱き続けた疑問や怒り、そして、その後国語塾を開き今に至るまでの間に日々強めてきた確信を、すべて刻み込んだ。
書き終えたときは、今日死んでも悔いはない、とすら思った。
しかし、改めて読み直すうちに、「戦いはまだ始まったばかりだ」という思いを強くした。
この本は、スタートラインにすぎない。
変えていく、変わっていくのは、これからだ。
私は、次の一歩を踏み出そうと思う。
あなたもぜひ、あなたにできる第一歩を、力強く踏み出していただきたい。